こんにちは。
私は東方司令部勤務の、・中佐です。
いつもなら、個人の部屋で自分の仕事をしているハズ・・・なんですが、あの人のサボリ癖のせいで、振り回されてばかりです。
・・・いつになったら、抜け出せるのでしょう?

――――「夢ノ中デ」

「ふわ〜ぁ・・・」

欠伸がひとつ、部屋に響く。
ここは東方司令部の執務室。
「中佐、眠いのか?」
机に積まれた書類の向こうから声を掛けたのは東方司令部司令官であるロイ・マスタング大佐。
“焔の錬金術師”という称号を持つ切れ者だが、大の女好きと部下に噂されてもいる。
そのロイの机の前に置いてあるソファーに座り、さっきから眠そうな仕草をしているのは“幻妖の錬金術師”という称号を持つ ・中佐だ。
“幻妖”という妖艶な雰囲気のする称号だが、本人は幻影を操るわけでもない。 の錬金術は水を操る錬金術。
となると“水妖”という二つ名になるのかな、と は思っていたらしい。
実技試験の時に水で幻を造って見せたせいだろう、と本人は割り切っていた。晴れて国家錬金術師になれたのだが、あとは年に一度の査定がある。
今年も査定が近くなって、各々それなりの準備をしなくてはならないのだろう。

「は〜・・・。眠いですよ、そりゃ・・・」
と、答えつつもまた欠伸をする。
「そんなに眠いのなら仮眠室で寝てきなさい」
ロイは時計に目をやる。時刻は午後2時。一番暖かくなる時間だ。
机の上の書類も残りわずか―――・・・と言えるのかは定かでないが。
「いえ、大丈夫です!大佐のお守りも任されてますし・・・」
と、いうのも普段ロイのお守り(もとい見張り)をしているホークアイは、中央司令部に出向いていて今はいない。
そのホークアイの代わりに、がロイの見張りをしているのだ。
「ふぅ・・・。そろそろ査定も近いしな。昨夜もあまり寝ていなかっただろ?」
「まぁ、そうですけど。 ・・・って昨夜の私の行動、見てたんですかっ!?」
ロイはくすっ、と笑って答える

「一つ屋根の下で暮らしているんだ。知っててもおかしくないだろ?」
そうというのも、はロイの家に泊めてもらっていて、 に錬金術を教えたのはロイだからである。
がロイと知り合ったのは、 がまだ士官学校の頃で、今では周りから羨まれるほど仲が良い、との噂もある。

―――まったく、この人は・・・。覗いてでもいるのかな・・・。

はぁ、と溜息をついた だが、こんなことにいちいち突っ込んでいたらキリがないのでスルーしておこうと決める。

「・・・眠い・・・」

もう一度そう呟いた時、

コンコン.
とドアがノックされた。
「ん?客か?・・・入れ」
「よ、大佐」
まず入ってきたのは金髪の小柄な少年。
「こんにちは。あ、 中佐も」
金髪の少年に続いて入ってきたのは大きな鎧の人物。
訪問者はエルリック兄弟であった。
も、ロイに報告書を渡しに来たときに何度か会っていたので、別に驚くこともなかったのだが。
「あのさ、ちょっと聞いていい?」
「何だ?」
「?」

「・・・大佐の彼女って、 中佐のこと?」

「・・・え?!」
いきなりのそんな問いにしばし硬直気味の であった。
――が、数秒後、ロイが沈黙を破った。
「鋼の、それは一体誰に聞いた?」
大体見当はつくけど。が の本音。
「やっぱり兄さん、いきなりそれを聞くべきじゃなかったんじゃない?」
「えーっと・・・。ハボック少尉に聞いたんだよ。な、アル」
「「ハボック少尉が・・・」」
どうりで正しいわけだ・・・。
そう思ったロイだが、その口の軽さにはもう慣れっこである。

「ね、エドワード君。少尉にはなんて風に聞かされたの?」
問いだそうとする 。
「え〜・・・」
「話してあげなよ、兄さん」
アルの説得にエドは渋々承知した。
「しゃーねーな・・・」

―――――エドとアルが司令部に着いた時。
「よォ、大将」
真っ先に気付き、声を掛けたのはハボックだった。
こういうところは意外と抜け目無い。
「ハボック少尉!」
「少尉、こんにちは!」
二人が挨拶すると、「にっ」と笑って近寄ってきて、話し始める。
「はは、また大佐に報告しにきたのか?大変だよなぁ、お前達も」
すると、少し離れたところにいる部下から、「少尉ー、これはどこに置いたらいいでしょうかー」とハボックに声が掛かった。
荷物を運んでいる最中なのか、時折部下たちに指示を出しつつエドたちと談笑する。
このごろ、そういうところがロイに似てきたようだ。
「まあね。・・・ったくめんどいったら・・・」
「もぅ・・・兄さん、『めんどい』は無いでしょ。大佐にはお世話になっているんだから」
エドとは正反対の性格、と言っても間違いでは無いようなアル。
と、その時ハボックはエドにクイクイ≠ニ手招きをした。
「「?」」
何?、と訝しげに思うが、「面白いことを教えてやるよ」というようなハボックの表情につられて、傍による。
そしてエド達が教えられたことは・・・・・・


(大佐にな、カワイイ彼女ができたんだよ。ついでに見てきな)
との言葉だった。

―――さて、時を戻して。
エドがにそのことを話している内に、ロイはエドからの報告書をすべて読み終わったところだった。
「・・・よし、鋼の。もう帰ってもいいぞ」
「へぇ、珍しく早いじゃんか。じゃ行くか、アル」
「お邪魔しました」
ガチャ、とドアが閉められ、再び部屋には二人っきりになった。
「・・・大佐ぁ〜、まだ終わらないんですか・・・」
痺れを切らしたのか、呆れ気味に言い放つ。
「もう少しだ。・・・燃やせば早いのに・・・」
そう、ぼそっと呟く。
「大佐?そんな事を企んだら・・・。無能にしますよ?」
ス、と は手袋を出す。
それにはロイの発火布のように錬成陣が描かれていた。
と、言ってもロイの発火布とは正反対の布、つまり“発水布”で作られている。空気中の水分を発水布に描いた錬成陣で循環させ、大きな流れにする。
錬成陣が無ければ使えない上に、ディティールがしっかりしていなければ使えない、高度な錬金術。
それをあっさり使いこなせるのは、おそらく だけだろう。
「分かった分かった。ちゃんとやるから・・・」
「分かればいいんです」
そう答えて、「ふゎぁ〜」と軽く欠伸をする。
「ほら、眠いんだろ?仮眠室で寝てきなさい」
「いえ、『ちゃんと見ててね』と言われてますし」
「はぁ・・・」とロイが軽めの溜息を付き、ペンを置いた。

「・・・そんなに私が信用ならないかね?」

すると は(そんなんじゃないけど・・・)という顔をして、ロイの机の書類に目をやった。
残りは30枚ほどだろう。まだ掛かりそうだ。
「ふわぁ〜・・・。ちょっと寝てますから・・・。終わったら起こしてくださいね〜」
そう言ってソファーにごろんと横になる。
「な、ちょっと・・・ ?」
悪戯の意味も込めてファーストネームで呼びかけるが、よほど眠かったのだろう。もう寝息が聞こえていた。
職務怠慢だぞ、と起こしてやりたい気分だが、可愛らしくて仕方がない。
「まったく、無防備なことだな」
このままでもいいのだが、ここは執務室。誰が来るか分からない。
やはり、仮眠室に寝せてきたほうがいいだろう。
そう思い、 の傍によると ス、と抱き上げた。
それに驚いて、も起きたが、何がなんだか、という顔をしている。
「わっ・・・ちょっと、何するんですかっ」
「こんな所で寝ようとするからだ」
の体勢はちょうど“お姫様だっこ”というヤツで、いくら抵抗してもロイに抱きかかえられたまま、何の変わりもない。
「ちょっと! 離してくださいってば!」
まだ抵抗するをそのままに、ロイはドアのほうに歩って行く。
「もうっ! どこへ連れて行くつもりなんですか!?」
ロイは ふっ、と悪戯のような笑みを浮かべて、に視線を向けた。

「仮眠室、だよ。・・・大人しくしていなさい、」
ちゅ、との頬にキスを落とし、ロイはまた歩き始めた。
「まったく・・・。勤務時間中は階級で呼んで下さいよ」
そうひとり言のように言うが、は抵抗を止めた。

なんとか、仮眠室までに誰ともすれ違わずに行き着くことが出来て、ほっとする。
ロイは、を窓際のベッドに下ろして、 ぐい、と自分のほうに抱き寄せると、深く口付けをした。
「ん、ぅ・・・」
体中が熱くなるような、深くて甘いキス。
・・・その時間、約数秒間―――――

「おやすみ、」
そう囁かれ、ロイが部屋から出て行くと、は小声で言った。

「好きだよ、ロイ」

甘い夢に導いてくれるのは、彼ひとり。

深い眠りに落ちながら、がそんなことを思っていたのは内緒にしておこうか。
                                <終>













1000hit祝いに、ハナミズキさんから頂きました〜vv
いや〜…夢ですよ夢…vv
ふふふ…腐腐腐(爆
大変萌えながら読ませていただきましたv素敵夢小説、有難うございましたvv